痛感
「痛みを感じなければ人は学べない。」
勝手に師と仰いでいる木下さんの言葉だ。
木下さんは大学の頃、働いていたバーにたまに来てくれ、近くに住んでいたのもあり酒を飲みながらギター談義、セッションを一緒にしていた人。
豪快で繊細で、少年のように真っ直ぐな人。
家のテレビは酔っ払った勢いで画面の大部分にヒビが入り、ベースはネックが折れていた。
多分お酒を飲んでいてその時話題になっていた「The Cove」という映画の話になっていた時だった。
「・・・動物愛護とかなんとか言うけど、イルカは牛と違って知性レベルが高いとか言うけど、殺生には変わりがない。痛みが嫌なら肉を食うな。人は痛みがないと真実にはたどり着けない」
というようなことを言っていて、俺はそれをテーマに小説を書こうと思ってるんや、と木下さんは言っていた。
その時、テーマはかっこいいと思っていたけど、心からの理解はできなかった。
大学生の時は、痛みをなるべく避けていたんだと思う。
恥ずかしさ、辛さ、かっこわるさ…
今は自分の成長には痛感が必須になっている。
痛みがないと自分は学ばない。
イチローもこう言っている。
「遠回りすることってすごく大事ですよ。無駄なことって結局無駄じゃない。遠回りすることが一番の近道。」
自分がそれでしか納得できないなら、他の人がなんと言おうが、それでやってみる。
そしてこけて、痛みがあって、やっとわかる。
自分はそんな人です。